晩秋の1日、埼玉県最大のブナがあるという浦山川・冠岩沢に行ってきましたが、驚くべき事に何とも残念な事態になっていました。
11/11 JR三鷹駅22:00集合で新青梅街道〜国道16号を経て国道299号で秩父方面へ。県道73号線に入り、浦山大日堂を過ぎて冠岩への林道に入るとすぐに土砂が崩れていて通れなくなっていたのでその手前でテントを張って宴会後仮眠とする。
11/12 朝からいい天気で稜線の紅葉が望まれる。お湯を沸かして暖かいカップめんの朝食をすまし、テントを撤収して出発。林道を歩き、登山道になって川を渡ると右に冠岩の集落への道を分けるあたりから入渓。
最初の2m滝を右から巻き、次の2mナメ滝を越えると仕事道が横切る。倒木でやや荒れたところを通過し、右から水が湧き出している沢を合わせさらに進むと2m3連瀑があり水流沿いを快適に越えると核心の15m滝となる。この滝は水流から離れた左側を登り、途中から落ち口には行かず左の樹林に向かってまっすぐに登る。ロープ使用。すぐ上に続く5m滝2連瀑は最初の滝は左のバンドをトラバースして越え、2つ目は水流の右を越えるが落ち口付近が滑りやすそうで後続にはロープを使用する。
右からのわさび田跡がある支沢を過ぎ、5mトイ状滝を越えてどんどん進むと大滝25mとなる。25m滝は近づくと滝壺はものすごい倒木で、滝の途中にも大きな木が引っかかっている。ひときは目を引いたのは下に落ちている巨大なブナで、こんなに大きな倒木は見たことがないくらいでもしかしたら目当ての埼玉最大のブナが倒れてしまったのではないかと不安がよぎるが、まさかそんなことはないだろうと気を取り直して右からの巻きに入る。
やや高くまで登ってから左にトラバースして沢筋を登り、最後は急な斜面を歩いて降りることが出来たのだが、下りながら対岸の斜面を見て凍り付いてしまった。幹が折れてしまった巨大な根が目に飛び込んできたのである。
今まで巨木がうっそうと茂っていたのが無くなった為かその周りだけ木がなく明るく日が注いでいるので、なんだかスポットライトを浴びているようで折れた跡が何とも痛々しい。すぐ傍らにはそれだけでも十分大きなブナと言えるほど大きな折れた枝だけ横たわっている。健在であればさぞかし幽玄な雰囲気をかもし出していたのであろうと思うと真に残念の極みだが、何百年ぶりにぽっかりあいた陽だまりにはまた新しい生命の息吹が始まるのであろう。自然の世代交代の営みを強く感じた瞬間である。
それにしてもこの沢の上部は大きなブナが多く実にすばらしい自然林が残っている。おかげで紅葉もまた素晴らしい。ナメと小滝が続く渓相とあいまって、澄んだ青空を背景にはらはらと落ち葉が舞っている景色も大変美しい。
右から支沢を合わせ3mほどの滝を越えると8m赤滝となる。ここは名前の通り水が流れているところは赤い岩で、そこに紅葉した落ち葉が貼付いていて何ともいい感じである。右から高巻く。その上で左側に大きなボルダリングが出来そうな岩があり、そこの陽だまりで小休止。あまりの気分の良さに少しのんびりする。
あとはのんびりと歩いていくだけである。最後の二俣は右にルートを取り、その先の分岐も右方向にどんどん登って行くと藪こぎは全くなく登山道に出ることが出来た。そのまま登山道を大持山に向かう。10分ほどで山頂に到着。
山頂は意外にも?人が多く、大持沢を登ってきたという沢パーティーまでいたのには驚いた(おまけに徳山さんのお知り合い・・)。あまりよくわからない周りの山々を眺めながら展望を満喫し下山にかかる。帰路は1150m付近から派生する支尾根を下るが、道はないものの紅葉を愛でながら快適に下りる事が出来た。途中に送電線の鉄塔があり、そこからははっきりした仕事道がある。行きは見られなかった冠岩の集落跡を通って往路と合流し車に戻る。
下山後秩父市内がやや渋滞したが、途中武甲温泉で入浴し、そばを食べて帰路につく。
埼玉最大のブナが倒れてしまったのは本当に残念でなりませんでしたが、辛うじてその最期に遭遇できたのは幸運だったのかもしれません。東京から程近いこんな場所に、こんなに立派なブナ林があるなんて全く知りませんでした。沢自体も紅葉が素晴らしく、晩秋に遡行するにはなかなかいい沢で、いろいろな意味で大変印象深い山行となりました。今回冠岩沢を提案していただいた斎藤さん、ありがとうございました。
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