北アルプス 笠ヶ岳周辺 山スキー


2004年5月7日〜8日  メンバー:森田


 今年の黄金週間は、前半は家族と共に恒例の月山キャンプ、後半?(平日なのだが)は久しぶりに単独で北アルプスの笠ヶ岳周辺を滑ってきました。

5/6 20:00頃自宅発。高速代節約の為、上野原から中央道に乗る。松本ICで高速を下りて安房トンネルを経て新穂高温泉へ。無料駐車場にて仮眠。

5/7 林道ゲート前に一旦荷物を下ろしておき、再び車を無料駐車場に置いて出発する。左俣林道を少し進んだところで左に穴毛谷へ入る砂防ダム工事用の作業道を分ける。当初、穴毛谷に入ればすぐにシールで歩けるものと思っていたのだが、そんなに甘くはなかった。作業道が終わったところで堰堤の上を徒渉して対岸に渡り、幾つか堰堤を越えた後河原をしばらく歩き、最後にまた飛び石伝いに対岸に渡ってようやく雪がつながっている様なのでシール歩行に切りかえる。
 穴毛谷下部は結構底が広く、両岸は切り立っていてなかなか迫力のある景観である。所々デブリの跡の上を歩きながら沢をつめていく。谷がやや右に曲がるといよいいよ核心である穴毛大滝となる。大滝は飛沫を撒き散らしながら左側壁から落ちている感じで、正面にはルンゼ状の雪壁が真直ぐのびている。登路はこのルンゼで、早速板を脱ぎつぼ足で取付く。
 いざ登り始めると足取りは遅々として進まず、なかなか終了点が近づいてこない。荷物が重い所為かとても長く感じる。最後は左に逃げて1時間以上かけて登り終えるとようやく杓子平の下部が見えるようになる。後はシールで高度を稼ぐだけなのだが、少々ばて気味でやはり足取りが遅い。
 何だかんだで杓子平の底に11:20にようやく到着。平らな絶好の場所を見つけてテントを張る。しばらく休憩し、防風のブロックを積んだりしていたが、まだ時間が早く天気は抜群に良いのでこのままどこも滑らないのはあまりにも勿体無いので抜戸岳を往復して来る事にする。
 杓子平を右から回り込むように抜戸岳へ向かってシール登高。辺りは誰一人居らず、杓子平を独り占めしている感じで何とも知れず気分が良い。50分程で山頂に到着。明日滑る予定の笠ヶ岳や打込谷源流もよく見える(二俣付近に水流が見えるのが気になるが・・・)。何よりも槍〜穂高の景観が素晴らしい。
 滑降は、今日の登路の広い斜面は明日にとっておく事にして小尾根を挟んで右側の急斜面に飛び込む。見え隠れするカール底のテントに向かって一気に下っていく。本当にあっという間の出来事である。
 テントに戻ってからは夕食を作ってウオッカをやりながら日が傾いていくのを静かに待つ。圧倒的な静寂の中、明日への期待が募る。

5/8 朝食をとり、充分太陽の上がった5:50に出発。ほぼ夏道のルートをとり、最後はアイゼン・ピッケルに切り替える。アイゼンを付けてみて気付いたのだが、ワンタッチアイゼンのバインディングを足に固定するバンドが無い。まあ外れればわかるだろうとそのまま登り出す。朝一番の固い雪面はアイゼンが小気味良く効き非常に快適だ。稜線に上がってからもそのままアイゼンで歩く。
 アップダウンが少なく何とも気分のいい稜線漫歩である。ところが、ふと気付くとアイゼンが片方無い。慌てて引き返して探す事となる。これ以降ザックについていた余分なストラップ2本をアイゼンに付けて代用とした。
 笠ヶ岳山荘を通り過ぎ、山頂直下の最後の斜面を登りきると待望の笠ヶ岳山頂に到着である。杓子平が良く見えているが、テントは小さ過ぎて確認できなかった。山頂から西に見下ろせるのは残念ながら小倉谷で、打込谷は小笠まで下りて滑り込む事になる。
 待望の滑降だが、まず笠ヶ岳山荘までは登路を滑り、小笠を回り込んだところから一旦板を脱いで打込谷へと入る。出だしは急傾斜だが、少し下ると実に広々とした快適な斜面が眼前に広がっている。上部はもう少し雪が緩んだ方が滑りやすいか?という所もあったが、右に左に自由にルートをとり、暫しこの広大な斜面の滑降に全く酔いしれてしまう。沢が収斂する辺りで1箇所滝らしい水流を見たが、あとは問題なく沢沿いを滑って二俣に到着する。振り返ると笠ヶ岳が遥か頭上である。
 さて登り返しだが、美しいナメが印象的な?二俣から左俣を覗くと、完全に水流が出ていて全く歩行不能である。仕方なく右俣を少し登り返して中間の尾根を乗越して、沢が完全に雪に埋まっているところまでトラバースした。幸い大した薮漕ぎもなく2110m辺りで沢に戻った。ここからはシールでただひたすら上へ登るのみ。ほぼ無風快晴のなかたった一人のんびりと登るのもなかなか良いものだ。右俣を滑った時はトレースは見当たらなかったが、こちらは抜戸岳から滑って登り返していると思われるトレースが幾つかついている。
 最後はアイゼンに履き替えて、稜線まで雪が繋がっていそうなところを見定めながら登ると、抜戸岳頂稜の南端へ出た。昨日杓子平から登ったところと偶然にも丁度同じ所であった。山頂から笠ヶ岳や今日滑ったルートを振り返ると感慨ひとしおだ。下りは、昨日とっておいた大斜面を滑る。遠く下から数パーティー登ってくるのが見える。今日は独り占めは出来なかったが、最後の滑降を存分に楽しむ。
 テントに戻り、しばらくはウオッカ片手に自分のシュプールを眺めながら余韻に浸っていたが、いつまでもこうしては居られないので12:35撤収して下山する。左に回り込むようにして大滝上の急斜面に入る。荷物が重くなったのでかなり疲れるが、一直線に落ちているルンゼ状の斜面の滑降は気分の良いものである。
 大滝を右に見ながら穴毛谷の底に下りると、あとは落石・デブリで荒れた雪面に注意しながら板を流すのみ。やはり何といっても下りは速い。あっという間に雪の末端に着いてしまった。そこからは板を背負い、往路通り2回沢を渡って作業道に出て、充実した2日間を回想しながら左俣林道を新穂高温泉に下った。


 学生の頃、秋に笠ヶ岳に登った時の杓子平の素晴らしい印象が忘れられず、いつかは滑ってみたいと思っていた所だったので、今回の山行は感慨ひとしおといったところです。カール底のベースというのも実に良いものですね。山スキーの世界では少々地味な感がある笠ヶ岳ですが、決して他のエリアに引けを取らない素晴らしい山スキーが出来たと思います。


コースタイム
5/7 新穂高温泉(6:25)―穴毛谷雪末端(7:40〜7:53)―大滝上(10:23〜10:40)―杓子平BC(11:20)
   杓子平BC(12:45)―抜戸岳(13:40〜14:05)―杓子平BC(14:12)
5/8 杓子平BC(5:48)―笠ヶ岳(7:38〜8:00)―二俣(8:20)―抜戸岳(11:05〜11:20)―杓子平BC(11:26)
   杓子平BC(12:35)―穴毛谷雪末端(12:58)―新穂高温泉駐車場(13:55)

地形図
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