北アルプス 剣岳山スキー


2001年4月30日〜5月2日
メンバー:舘野、飯田、森田


4/30 朝から雨が降っている、志気が上がらないが朝食を食べて準備していると雨も上がってきた。とりあえず扇沢駅へ移動。アルペンルートは雨だというのに予想以上の混雑で、ロープウェイなどは1時間以上待たされた。室堂に着いたのはすでに14時を回っていた
 まず雷鳥平まで滑るが、途中、ちょっと急な斜面に入ると自分の作った雪崩に流されてしまった。別山乗越まではシールにスキーアイゼンを付けて快適に登る。別山乗越からの下降は時間も時間なだけに表面がクラストしたモナカ状で最悪。なんとか小屋へたどり着く。まずは今日の無事をビールで乾杯。小屋は空いていて3パーティーほどしか泊まっておらず、殆ど山スキーヤーのようだった。

5/1 早々に朝食をとって出発。まだ雪面はカリカリで滑るのは大変疲れるがやはり速い。あっと言う間に長次郎谷出合に到着。雪面はまだ堅いので板は背負い(私は引きずり)アイゼンを付けて歩き出す。
 源次郎尾根と八ツ峰に挟まれた長次郎谷は想像していたよりも広く、威圧感は無い。横からの落石等に一応注意して黙々と登る。登るに従って、沢底まで日が当たるようになり、これから登る左俣が稜線まで望めるようになる。左俣は出合付近が狭くなっていて、デブリで埋め尽くされている。登路は一旦右俣に入って熊ノ岩を巻くように登り、熊ノ岩の上で左俣に入る事にする。熊ノ岩上は平になっていて休憩には絶好だが、そこから見上げる左俣は急傾斜でしかもデブリだらけであまり快適そうには見えない。所々残っているキックステップの跡を使いながら一歩一歩長次郎のコルを目指す。
 コルまで上がると、目の前に剣岳に向かう雪壁が立ちはだかる。先行者によってステップは切られているものの、下りは恐そうである。小休止の後、不要な荷物はデポし、(ビールは雪の中に埋める)ザックにロープと必要なものだけ入れて出発する。最初の雪壁の登りはロープは使わなかったが、もしステップが無かったら登りでもロープを出したくなる傾斜だ。そこを過ぎるとあとはなだらかな雪稜が山頂まで続いている。僅かな登りでいよいよ山頂に到着。
 天気は相変わらず快晴で、360度素晴らしい展望だ。「山スキーで登る山頂としては、おそらく最も素晴らしい部類に属するに違いない」などと何だか訳のわからないことを考えてみたりしている。久々に感動してしまった。やはり滑ることが出来なくても山頂には立つべきだとこの様な時はつくづく思ってしまう(山頂から滑る人もいるらしいが・・・)。飯田さんは剣に登るのも初めてだったようで大変喜んでおられた。
 さて問題の下りだが、雪壁はやはり念のため2ピッチロープを使った。登るときは気がつかなかったが、丁度1ピッチ下った所の岩の(登る側から)反対側に残置があったので問題はなかった。
 コルに戻ると、ビールを掘り出し、荷物を整えていよいよメインイベントである滑降に移る。いざ長次郎谷に飛び込むと、先程雪壁を下降してきたせいか全く急斜面に見えない。デブリで滑りにくいのは確かなのだが雪の状態が適度に緩んでいるので滑りにならないほどではない。うまくデブリの少ないところを選んでショートターンで下りていくと、あっと言う間に熊ノ岩上に到着。早速先程冷やしたビールで乾杯!。ここは、源次郎尾根と八ツ峰の絶好の展望台で、「山スキーでのビール休憩場所としては、おそらく最も素晴らしい部類に属するに違いない」などとまたしても何だか訳のわからないことを考えたりしている。この幸福感は何事にも代え難い。
 十分にその雰囲気を堪能した後、再び滑降に移るが、ここからの下りはまさに快適そのもの。もう感激のあまり涙が出るのをこらえるのがやっとな程(??)。下部もそれほど雪が腐っておらず、出合まで本当に楽しむことが出来た。あとは剣沢を小屋まで登り返さなければならないのだが、この辛い登りも笑顔でこなし?、剣沢小屋に到着早々、再びビールで本日の素晴らしい山行に乾杯したのは言うまでもない。

5/2 今日は内蔵助谷を滑り、黒部湖に下山する予定であったが、天気が崩れる予報が出ていたので雷鳥沢を滑って室堂へ下山することにする。
 小屋から別山乗越までは30分ほどで登る。ここで剣沢小屋に留まり後発隊と合流する予定の舘野さんとはお別れ。乗越から僅かに下って雪の付いたところから早速雷鳥沢の滑降に移る(実は雷鳥沢を滑るのも初めてである)。まだ時間が早いので雪面は堅いが、斜度も緩く、エッジも利くので滑るには問題ないが、ここは殆どゲレンデ状態で雪面は荒れているのであまり快適とは言えない。それでも下るに従ってある程度快適に滑れるようになり、そこそこ楽しんで雷鳥平に下りる。ここからはシールを付け室堂目指して登り返す。今日はやけにたくさん雷鳥が飛んでいるが、これも天気が崩れる前兆か?。室堂に着くとさすがに今日はそれほど混雑はなく、順番待ちゼロで扇沢駅まで帰ることが出来た。途中、黒部平駅で観光客に囲まれた中、ます寿司と缶ビールでささやかながら打ち上げとした。


 今回初めて剣岳周辺を滑ったのですが、正直の所、今まではあまりこの山域には興味がなかったのも事実です。理由は、アルペンルートが高いし混むというのもありますが、高いお金やアプローチに1日使って三ノ窓雪渓や池ノ平山を滑るのも何となく面倒くさいといった感じでした。しかしながら、長次郎谷から剣山頂往復となるとなぜか俄然食指が動いたわけです。やはりピークを踏むというのはとてもすっきりするものです?!。
 最近、滑降の快適さのみを求めて山頂を顧みない山スキーヤーが増殖しているようですが(?)、それはそれで素晴らしいこととは思いつつも、たまにはこの様な「山登り」もまた良いのではないかなどと思う昨今です。

コースタイム
4/30 室堂(14:28)―雷鳥平(14:48)―別山乗越(16:05〜16:33)―剣沢小屋(16:45)
5/1 剣沢小屋(5:50)―長次郎谷出合(6:18)―長次郎のコル(9:05〜9:28)―剣岳(10:15〜10:29)―長次郎谷出合(12:10)―剣沢小屋(13:48)
5/2 剣沢小屋(7:10)―別山乗越(7:40〜8:00)―雷鳥平(8:18)―室堂(9:15)


剣岳地形図
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