南八幡平 葛根田川・滝ノ又沢〜大深沢・八瀬沢(下降)〜本流〜東ノ又沢

2000年8月13日〜16日
メンバー:舘野(L),飯田,北,沢田石,柴田,森田(銀座山の会)


 今年の夏休みは、銀座山の会のメンバーと葛根田川と大深沢を継続してのんびりと沢歩きを楽しむ計画を立てました。

8/12 18:30秋葉原駅集合。最初は意外に快調かと思われた東北道もさすがにお盆の帰省ラッシュというのは半端ではなく、2度と思い出したくもないような大渋滞の後、現地に着いたのはすでに朝になっていた。

8/13 滝ノ上温泉は、滝ノ上分れからの県道の復旧工事の為休業中で、歩いて入ることも出来ない状態らしい。 そこで、網張温泉から延びる林道を経由して三ツ石山荘からの登山道で滝ノ上温泉に入る。しばらくは車道を地熱発電所を見ながら歩き、細くなった林道が右にカーブして沢を離れるところから入渓する。4年ぶりの葛根田川に降り立つと、なぜか水がかなり濁っている。雨でも降ったあとなのだろうか?しかし水量は決して多くはない。
 今日は寝不足のため、大石沢出合辺りまでで切り上げる予定なのでのんびりと歩く。右から秋取沢を合わせ、次の右からの支流は見覚えある美しい滝で出合う。徒渉を繰り返して進むが平水なので全く問題ない。しばらく歩くと両岸やや狭まり、右岸沿いに通過すると、いよいよお函のゴルジュとなる。水の色が白濁して乳緑色といった感じなのが少々惜しまれるが、見方によってはこれはこれでまた美しいものだ(?)。左岸沿いに通過するとしばらくで大石沢出合に到着する。
 時間はまだ昼前だが、予定通り早くもテントを設営する。あとは各自自由時間。ウイスキーを飲む者、昨日からの寝不足を解消する者、釣りに興じる者と様々。私はウイスキーの入ったカップを片手に大石沢を少し釣り歩くが、本流は水が濁っているのに対し、大石沢は全く濁っていなかった。釣果はまずまずでおかげさまで夕食では自然の恵みに感謝しつつ岩魚の塩焼き・ムニエル・骨酒をいただく事が出来た。夕食の宴会後、あまりに良い気持ちなので焚き火の横でごろ寝した私は朝方寒くて目をさまし、再び焚き火に火を入れる破目になった。

8/14 朝食を済ませ、6:37出発。相変わらず本流は濁っている。しばらくは滝もなくただ歩くだけの遡行となるが、一見なんでもない渓相でも、遡行者を飽きさせない美しさがある。1時間ほどで葛根田の大滝となる。直登は不可能なので右の踏み跡から巻く。さらに1時間で滝ノ又沢と北ノ又沢の二俣に到着する。ここで、予定通り滝ノ又沢を登る館野,沢田石,森田の3名と、北ノ又沢支流から八瀬森の大場谷地湿原に出るルートをとる飯田,北,柴田の3名の2パーティーに急遽分かれる事になった。集合は八瀬沢の1030m二俣とする。
 滝ノ又沢に入ると、すぐに連続する滝場となる。最初の7mを右側から越ると、釜とナメ滝が4つ程連続していてなかなか素晴らしい景観だ。その先沢が左曲するとこれまた美しい4mナメ滝と続く。これは水流の真ん中を飛沫を浴びながら気持ちよく直登する。その上は時折ナメが現れる程度で平凡な渓相となるが、魚影が濃く、沢田石さんと舘野さんはなんと岩魚を手掴みにしてしまった。全く思わず童心に帰る一齣である。
 途中、左岸が段丘のように平らになっている所で、左から崩れている粘土質?の土の上で水の濁りがなくなった。どうもこの白濁は、特定の土質によって起こっている様である。さらに進むと15m滝となる。黒い色をしたナメ状の滝でなかなか美しいが、傾斜が急で直登は無理のようだ。小休止後、左のガレから踏み跡のようなものを追って高巻くが、急傾斜の木の生えた草付きを結構追い上げられ、おまけにトップを行く私の落とした落石で舘野さんが左腕に怪我をしてしまった。滝上に出てから絆創膏とテーピングで止血する。医師である沢田石さんの「今度から縫合用の針と糸も持ってきた方がいいかな?」との発言に、「こんな所で麻酔もなしに縫われたくはないよ!」との舘野さんの返答。
 あとはどんどん詰めて行く。最後は薮がひどくなった沢筋を捨ててほんの少し薮を漕ぐと意外にあっさりと登山道に出た。実質上薮漕ぎといえるのは10分もなかった。
 登山道に出てから左に少し歩いて、薮の薄そうな所から八瀬沢への下降を開始する。ほんの数分で沢がはっきりするが、忠実にたどるとものすごい蛇行を繰り返す。特に滝という滝もなく30分程で待ち合わせ予定の二俣に到着。北ノ又支流隊が来るまでウィスキーでもやりながらのんびりと過ごす。すぐ横の釜で舘野さんが岩魚を立て続けに2匹釣り上げる。(これなら今夜も岩魚を賞味できるのは確実と思われこの2匹は放したが、残念ながらこれが本日最後の岩魚であった・・・。)
 最終到着予定時刻の15:00をまわっても北ノ又支流隊は現れないので、さすがに心配になり荷物をまとめて下降予定の沢を登り始める。ところが歩き始めてすぐに北ノ又支流隊が下降して来て感動の?再会。再び全員で下降し、左岸に適地を見つけたところでテントを張る。

8/15 6:36出発。しばらくは平凡な小沢をたどると、間もなくナメや小滝が現れ始める。ちょっとしたクライムダウンをする所もあるがロープを出す程の所はなく、快調に下っていったが、やがて下半分は平凡なゴーロ歩きとなる。2時間ほどで大深沢本流に出た。
 ここからいよいよ大深沢の遡行となる。すぐに右に大きな丸い岩を過ぎると両岸やや狭まる。水量もあってスケール感がありなかなかいい感じだ。問題なく通過しさらに進むと15m滝となる。左をへつって取り付き、水流左を快適に登るとその上は4mナメ滝と続いている。この辺りは実に素晴らしい所だ。先への期待感が高まるところだが、次の5m滝を水流左から越えると渓相は一転し、両岸ガレたゴーロとなる。山深い沢には似つかわしくない工事現場のような風景であるが、これも自然の一部なのであろう。ガレたゴーロが終わると障子倉沢出合となる。その先白い岩の4m滝を越えてしばらく進むと関東沢出合に到着。ここは本流よりも関東沢の方が水量が多いようにも見える。
 竿を出して今晩のおかずを確保しながら歩くと、突然大滝20mが姿を現す。この大滝は落差よりも幅の方が広く思わずはっとするほど美しい。二つに分かれた水流の中央の木の生えている脇を快適に登ると、今までとは打って変わって素晴らしいナメの連続となる。このナメは東ノ又沢出合までずっと続いていて、楽しいナメ歩きを満喫する。東ノ又沢に入ってもしばらくナメが続き、ようやく終わったところで左岸に幕営適地を見つけ本日の行動終了。
 最後の晩も岩魚と焚き火で夜もふけていった。アルコールをちょうど飲み尽くしたところでお開きとなる。

8/16 6:35出発。(今回は毎日ほぼ同じ時刻に行動を開始する規則正しい山行だ)1ヶ所小ゴルジュの中に小滝が続いているところがあったが、他は特に記するような事はなくひたすら歩いていく。最後は理想的には湿原に出たいところなのだが、忠実に本流筋を詰めすぎたのか湿原には出られず、それどころか沢筋が登山道と平行し、かなり薮っぽくなって来たので、適当なところから右に上がり、南に向かって歩くとすぐに登山道に出た。ここでも殆ど薮を漕ぐことはなかった。
 あとは登山道を大深岳方面に歩くが、笹が覆っているところが随所にあり、道を歩いている方が薮漕ぎに近いようなところもあった。主脈縦走路に出ると道はしっかりして、途中ニッコウキスゲの大群落などを楽しみながら三ツ石山荘経由で林道車止めまで戻った。


 葛根田川と大深沢という「東北の優しい谷」を代表するような2本を継続でき、大変充実した山行となりました。葛根田川の下部は再訪でしたが、以前来たときと違って水が異常に濁っていたのが少々残念でした。しかし、渓相の美しさは相変わらずで、今回登った滝ノ又沢を含めて充分に楽しめました。一方、大深沢はやはり大滝からのナメの連続が圧巻です。ただ下部は15m滝付近以外は概して平凡に感じました。
 今回のような沢は、遡行するにあたって困難な箇所が全くないので、緊張感なくのんびりと沢歩きをするにはまさに最高だと思います。しかしながらそこが逆に人によっては欠点に感じられる場合もあるかも知れません。「沢に何を求めるか」ということなのでしょうが、このようなのんびりした沢登りを楽しむ感性を失いたくないと思いました。

コースタイム
8/13 林道車止め(6:40)―滝ノ上温泉(8:09)―入渓点(8:50)―大石沢出合(11:30)
8/14 大石沢出合(6:40)―二俣(8:43)―登山道(12:33)―八瀬沢  m二俣(13:12)
8/15 幕営地(6:36)―八瀬沢出合(8:52)―関東沢出合(11:43)―東ノ又沢出合(13:31)―幕営地(:)
8/16 幕営地(6:35)―登山道(9:48)―林道車止め(13:09)


遡行図(葛根田川)
遡行図(大深沢)
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