北アルプス 太郎平小屋周辺山スキー

1999年4月29日 〜5月3日
メンバー:舘野(L),森田


4/28  20:00新宿駅集合。首都高―中央道―長野道経由で松本ICで下り、安房トンネルを抜け神岡から打保への林道に入り飛越トンネルに至る。小雪がちらつく中仮眠。

4/29  飛越新道登山口〜太郎平小屋(滑降標高差290m)
 天気はあまり回復せず、まだ雲が低くたれ込んでいが、とりあえずスキー板を背負って歩き出す。最初の急登を終え、稜線に出て少し歩くと雪がつながりシールに切りかえる。しばらくはなだらかな樹林の中の登りが続き、寺地山からは少し下ってさらに進むとまもなく樹林帯も終わって無木立の斜面が広がる。下りは快適そうなこの大斜面を登り切るとようやく主稜線で、そこからシールを外して待望の今山行最初の滑降となる。シュプール一つ無い気持ち良い斜面をあっという間に滑り降り、太郎山の緩やかな登りに差し掛かる。ここは短いのだが少々疲れが出た。太郎山山頂でようやく太郎平小屋が眼前となり、一気に滑り降りる。
 今晩、太郎平小屋の食卓についた宿泊客はたった3名だった。この小屋は食堂になんと“炬燵”があり、大変くつろげる。

4/30  太郎平小屋〜薬師岳〜中央カール〜薬師沢右俣〜太郎平小屋(滑降標高差1244m)  図―1
 天気は快晴。気温はかなり低い。今日は薬師岳周辺を滑る予定でとりあえず薬師岳への登りにかかる。薬師岳山荘あたりから薬師沢右俣や鳶谷源頭を観察しながら登るが、気温が低めなので一番雪が腐りやすいと思われる薬師沢右俣を滑っておこうという事になり、当初の予定通り中央カール〜薬師沢右俣に決定。クラストしている斜面が続くが、スキーアイゼンを利かせて難なく登る。
 薬師岳山頂では抜群の展望をほしいままに小休止。山頂から見ると、金作谷カールは非常に急斜面だが、中央カールは傾斜が緩く問題なさそうだ。早速シールをはがし中央カールへと滑り込む。心配した雪質もまったく問題なく、あっという間にカール底まで滑り降りてしまった。
 カールの底は実に気持ちの良い場所で自分たちのシュプールを見ながらコーヒータイムと洒落込んだが、地形図を見るとモレーンの下もしばらく快適斜面が続いているようなのでもったいないので空荷で150m程滑りを楽しんで登り返してからカールの側壁に取り付く。 最初はシールで行けそうだったが、結局途中でアイゼンとピッケルに替えて登り、東南尾根を登り返して今度は薬師沢右俣に滑り込む。
 既に時間は12時をまわっていてかなり日が当たっていたが雪は全く腐ってなく、信じられないくらい快適な滑降にしばらく酔いしれてしまった。2400mあたりから雪質が変化しだし若干滑りにくくなるが、少し下ると少々重いが均一な雪質となりまたまた快適で、ついまじめに地形図を見るのも忘れて予定よりもかなり下まで滑ってしまった。どこまでも滑っていきたい気持ちを押さえて右岸を登り、尾根伝いに2448m標高点まで登って小休止。途中、今滑ってきた斜面を見渡せる所があり、我々のつけた2本のシュプールを見ながら興奮覚めやらずといった感があった。あとは薬師沢中俣支流を下り、薬師峠へはわずかな登りである。
 今日は1日中快晴の下、これ以上考えられないほど素晴らしい滑降の連続で、まさに会心の1日であった。今晩は自炊でメニューはジフィーズカレーである。

5/1  太郎平小屋〜黒部五郎岳〜ウマ沢右岸〜薬師沢左俣右岸尾根〜太郎平小屋(滑降標高差1435m)  図―2
 今日は今回の山行中最長の行程になる1日である。5時起きでカレーうどんを作って食べ、6:00出発。北ノ又岳まで順調に登り、例の大トラバースにかかる。以前、室堂から上高地へ縦走した時を思い出しなんとなく懐かしさすら感じてしまうのはおかしなものだ。たった10分ほどで中俣乗越まで到着してしまう。そこから黒部五郎岳の途中まではシールで歩くが上部はまだ硬く、アイゼンに履き替えて肩まで登る。
 まだ時間が早く、斜面はクラストしているので山頂まで板を持っていくか一瞬考えたが、ここまで来たのだからやはり板と一緒に山頂へ。山頂では昨日に引き続き素晴らしい展望をほしいままに小休止。
 さていよいよ滑降に移るが、さすがに山頂直下の斜面は硬く、慎重に下るが、私はどうも板がばたついてしまい、いつもの調子が出ない。今シーズン替えたスキー板の所為かと思ったが、同じ板を履いている舘野さんは全く問題なさそうに下りていくのでやはり技術の問題か!と少々精神的ダメージを受ける。それでもウマ沢の右岸に入ると全く解消して実に快適な滑降となる。もったいないので途中で一度休憩するが、この尾根は最下部以外は樹林も疎らで、傾斜は緩いがとても楽しく滑る事が出来る。
 赤木沢出合ももうすぐになって、ウマ沢も流れが顔を出し始めたので2150m地点で左岸に渡り、少し登って尾根を乗越し、再び赤木沢まで滑り降りて今度は赤木沢の左岸の尾根に取り付く。しばらくは樹林の中の急登だが、途中、流水で喉を潤す事が出来た。一登りで傾斜の緩い尾根に出る。ここから今滑ってきた黒部五郎岳からウマ沢右岸の斜面が一望出来、「あんなところから来たんだ!」とスキーの機動力に我ながら感心する。
 傾斜が無くなり赤木平へトラバース気味に登る辺りから右足親指の付け根にできたまめが割れたらしく少々痛い。赤木平からの薬師沢左俣右岸尾根は、一見樹林が濃そうに見えるが、中に入ると見事な針葉樹の巨木で樹間は滑るには充分である。おまけに傾斜もかなりあり、想像以上にとても楽しめた。途中からは左俣に下りてそのまま出合まで沢沿いを流し本日の滑降は終了。あとはふらふらになりながら薬師沢中俣をつめて太郎平小屋まで戻った。さすがに疲れた。
 今日も1日快晴の下、充実感満点の最高に素晴らしくも長い1日であった。

5/2 太郎平小屋〜鳶谷源頭〜岩井谷横断〜太郎平小屋(滑降標高差820m)  図―1
 今日も朝から快晴である。あまりの晴天続きに休養が取れないといううれしい悲鳴をよそに本日は薬師岳西面に向かう。西面は雪が緩むのも遅く、行程も短いのでのんびりと8:48出発する。小屋の前で準備していると、ヘリコプターがやってきて中から荷物と共に山スキー客が数名下りてくる。
 薬師岳山頂からは雪付きが悪く滑降不能なのがわかっていたので、避難小屋まで登りそこから滑降を開始する。さすがに上部はクラストしていて慎重に下りるが、スピードが出過ぎないようにターンを細かく刻んで行けば全く問題なく、思わず狂喜してしまうほど素晴らしい。この斜面は、今回の山行中もっとも広々としていて実に気持ちいい。
 快適な斜面というのは本当にあっという間に終わってしまうもので、 2450m地点で小休止。 自分たちのシュプールを見ながらのコーヒーはまた格別だ。下から見上げる薬師岳と鳶谷源頭は、多少木があるもののオートルートを彷彿とさせる程である(月並みな表現ではあるが・・・)。  ここからわずかな登りで今回滑る予定の尾根の分岐につく。そこからは岩井谷に向かってどこまでもどこまでも適度な傾斜の素晴らしい尾根が続く。最後に尾根末端の急斜面を岩井谷に滑り降りると滑降終了。あとは折立からの登山道のある尾根に登り返し、本日の夢のような滑降の余韻に浸りながら小屋へと向かった。
 夕方、今日薬師峠にテントを張ったTKCのメンバーに会いに行く。すでにテント設営後、薬師峠周辺をひと滑りして来たそうである。
 その晩は自炊で再びメニューはジフィーズカレーあったが、小屋の方に揚げたてのコロッケを差し入れていただいき、大変美味しかった。ありがとうございました。

5/3 太郎平小屋〜飛越新道登山口(滑降標高差980m)
 とうとう下山の日だ。午後から天気が崩れるという事だったので早々に出発。最初は一昨日登った斜面だが、入山したときはシュプールひとつ無かったこの斜面も今はゲレンデのようだ。北ノ俣岳手前の神岡新道分岐でシールを外す。ここからは無木立の大斜面が広がっている。登りは苦労したこの斜面も滑ればあっという間。登りでわからなかった避難小屋も今度は見つける事ができた。
 樹林帯に入ってからも結構スキー板が使え、寺地山への登りなどで数回板を外す事もあったが、おおむね快適に1643m標高点手前まで滑って来れた。あとは板を背負ってすでに雪の無い登山道を兼用靴をどろどろにして下りていった。
 帰路は山吹峠経由で上宝村に出るルートをとったのでかなり時間短縮出来たと思ったが、上高地近辺,中央道としっかり渋滞にはまり、帰宅は深夜になってしまった。


 今回の山行は、幸運な事に天気が良かったので予定していたコースすべてを実行でき、今までにないくらい最高の充実感を味わう事ができました。連日の行動は少々疲れましたが、一晩寝て再び快晴の朝を迎えると(少なくとも気持ちの上では)疲れなど吹っ飛んでしまうのもまだ若い証拠でしょうか?。太郎平小屋に4日も連泊したので、いろいろな方々との語らいもまた楽しいものでした。とにかく全日程、特に中3日間素晴らしい快晴が続いた事に感謝するべきでしょう。「会心の作」と呼べる5日間でした。


コースタイム
4/29 登山口(8:32)―神岡新道合流点(9:00)―寺地山(13:10)―稜線(13:10)―太郎平小屋(13:10)
4/30 太郎平小屋(7:20)―薬師岳山荘手前(8:40)―薬師岳山頂(9:46)―中央カール底(10:35)
    ―薬師沢右俣滑降開始地点(12:15)―太郎平小屋(15:07)
5/1  太郎平小屋(6:20)―北ノ俣岳(7:35)―中俣乗越(7:55)―黒部五郎岳山頂(10:10)
   ―ウマ沢横断地点(11:23)―赤木沢横断地点(11:52)―赤木平(13:30)
   ―薬師沢左俣2050m地点(13:56)―太郎平小屋(15:45)
5/2  太郎平小屋(8:48)―薬師岳山荘(10:05)―避難小屋(10:55)―2450m地点(11:40)
    ―尾根分岐(12:21)―岩井谷(12:59)―太郎平小屋(14:09)
5/3  太郎平小屋(7:30)―神岡新道分岐(8:25)―寺地山(9:05)―飛越新道分岐(9:48)
    ―登山口(10:55)

地形図―1
地形図―2
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