森吉山 打当川源流散策

 今回は家族でキャンプをしながら森吉山南東部の打当川源流を散策しようという計画である。もともと、以前遡行した同じ山域のノロ川源流が実に素晴らしいナメの沢であったので、稜線を隔てて反対側の打当川源流も同じような渓相に違いないという発案であったが、果たして結果は期待に違わない素晴らしいものであった。

7/16 17:00頃自宅を出発し東北自動車道を北上し、0時過ぎに花巻PAで仮眠。翌朝、盛岡ICでおり、国道341号からブナ森牧場を通り桃洞林道へ入る。


立又沢(打当沢)
1999年7月17日   メンバー:森田(真),(森田(伸),森田(遥))    遡行図1

 桃洞林道が立又沢を渡ったところにテントを張り今日のベースとする。早速橋から入渓するとすでに全くの舗装道路のようなナメである。水量は踝程度、傾斜もほとんど無いので鼻歌交じりで楽しく歩く。適度な間隔で落差数十cmの小滝と釜、甌穴が多数連続する。
 しばらく歩くと辺りの樹林に秋田杉が見られるようになり、まさに地形図を見ながら想像していたそのままの光景が展開し、しばし上機嫌になってじゃぶじゃぶと歩く。時折側壁がスラブになったり、水際にニッコウキスゲが咲きアクセントとなるが、とうとう滝らしい滝は無いまま桃洞林道終点から伸びる登山道が横切る。その先はだんだん水流が細くなり薮が両岸から覆う事が多くなるが、沢床は完全にナメのままである。
 右岸にニッコウキスゲの咲く草原を2回程見送り、地形図では読み取れない屈曲を繰り返すようになると水流はますます細くなり、やがてニッコウキスゲの咲き乱れる源頭の湿原に至る。帰りは往路を登山道横断地点まで下り、登山道から桃洞林道に出てテントへと戻った。
 続いて交替で妻の伸子が同じ沢を遡行しに出発するのを見送り、私は娘の遥と橋周辺のナメをじゃぶじゃぶ歩いて遊んだ。
 伸子が戻った後、再び橋から入渓し、幸兵衛滝手前まで下降した。上流同様完全なナメで川幅もやや広がり、途中傾斜の緩い長いナメ滝がとても美しい。幸兵衛滝手前も傾斜は緩いがとても長いナメ滝になっていて万が一滑ると幸兵衛滝からダイビングとなってしまうのでさすがに落ち口までは行けず、中程で引き返してきた。
 子供でも安心して歩ける?舗装道路のようなナメが延々と続く素晴らしい家族向けの沢であった。

コースタイム
入渓点(10:35)―登山道横断地点・下山時(11:59)―BC(12:25)


中ノ又沢源流
1999年7月18日   メンバー:森田(真)    遡行図2

 今日は中ノ又沢源頭を散策してみる事にする。当初の予定では、安の滝まで遊歩道を歩いて入渓するつもりだったが、写真で見ると落差90mの安の滝は登れそうになく、巻き道も有るかどうか不明だったので、(遠目には踏み跡無しに巻くのは大変な労力と時間がかかりそうなので・・・)安滝林道をもう少し先まで行った所からの登山道を利用して源流部に入る事にする。
 登山道は1/25000地形図には全く記載が無いが、道標も有りとても良く整備されている。林道から尾根を一頻り登ると桃洞杉・佐渡杉分岐となり、桃洞杉方面に向かいしばらく歩くとトウドウ沢と中ノ又沢の二俣に着く。
 まず安の滝まで下降しようと思ったが、いきなり深そうな瀞となって時間がかかりそうなのであきらめ、トウドウ沢に入る。出合からすぐに小滝・釜が連続していて、一個所残置ロープを使用して通過した。最初の連瀑を過ぎると穏やかな平ナメの渓相となりどこまでも続いている。860mの二俣で引き返し、今度は中ノ又沢本流に入る。
 両岸所々スラブが発達し、秋田杉の樹林相と相俟って独特の素晴らしい景観を形成している。釜や甌穴には岩魚が悠然と泳いでいる。この辺りは全域禁漁となっているようだが、そのおかげでこのような沢本来の姿を楽しむ事が出来るのだろう。いったん両岸が広いスラブで開け、しばらく進むと二俣となる。
 右俣(金平沢)はすぐに金兵衛滝があり、ちょっと見た目には登れそうにない。しばらく思案したが、ここはまず左俣(甚平衛沢)に入り、登山道が横断した所でそれを右に辿れば再び右俣に戻る事ができ、そのルートが最も効率的にこの流域を広く歩けると思われるのでまずは左俣に入る。
 左俣もはじめは小滝が連続し、左岸がスラブになっている。相変わらず完全なナメ床を気持ち良く歩いていくが、やがて堆積物が多くなってきたかと思うと登山道が横切った。登山道を右に入り佐渡杉分岐を過ぎしばらく歩くと再び中ノ又沢に出る。
 この登山道は下山に使えそうなので、ここから上流と下流の金平衛滝までを往復する。上流を少し上ると堆積物でナメ床が消え、薮が覆うようになってきたので引き返す。このまま最後までつめて昨日遡行した立又沢とつなげるとしたら、多少の薮こぎになるであろう。下流は狭いながらも楽しいナメ床で、金兵衛滝まで10分ほどだった。登山道に戻り靴を履き替え、登山道を安滝林道へと下った。
 下山後、打当温泉で入浴し、ノロ川方面に向かう。第12回日本ジャンボリーの時に作ったというあまりに広い駐車場の片隅にテントを張る。


コースタイム
登山道入口(10:55)―トウドウ沢出合(11:27)―二俣(12:20)―左俣登山道横断地点(12:37)―右俣登山道横断地点(12:51)―登山道入口(14:00)


 翌19日はノロ川源流散策の予定であったが天気が今一つ良くなかったので残念ながら取りやめ、八幡平まで移動し周辺を散策した。この日は後生掛温泉のオンドル自炊部屋に泊まり温泉を満喫し、最終日の20日は小岩井農場に寄ってバーベキューの昼食をとってから帰路についた。


 今回遡行した打当川源流部は、ノロ川源流に匹敵するくらい素晴らしいナメの沢でした。全体に地形図を見てもわかる通り傾斜が極めて緩いので大きな滝はほとんど無く、林道や登山道が入っているので簡単に入渓できて、手軽にナメの素晴らしさを満喫するには極めて好都合な沢といえるでしょう。
 素晴らしいナメ床とスラブの側壁、ブナと秋田杉の美しい森にゆったりと泳ぐ岩魚たちとまさに桃源郷と言える、「遡行」というより「散策」という言葉がぴったりの美しいエリアでした。

 
遡行図1
遡行図2
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