以下の文章は、東京コッフェルクラブのメンバーによる1995年のヨーロッパアルプス・オートルートの山行報告書から転載しました。




ヨーロッパアルプス
 氷河スキーとブライトホルン

   〜東京コッフェルクラブ  ヨーロッパアルプス オートルート山行報告書より〜

1995年4月27日〜5月8日
メンバー:山室、塩見、平川、平川、森田



ヴァレ・ブランシュ氷河スキー  4月28日(木) 快晴

 朝ホテルのテラスに出ると、昨日は雲に隠れて見えなかったシャモニ針峰群が青空の下にくっきりと見えている。ホテルに余分な荷物を預かってもらい、ロープウェイ駅まで歩き、エギュ・ド・ミディまで行った(ここは、もう3842mである)。展望台でモンブラン、グランド・ジョラスなどをカメラ、ビデオに収めた後(マッターホルンはまだ小指の先ほどの大きさである)、急な斜面をつぼ足でコルまで下りてスキーをはく。最初の1本、2本は、昨日降った新雪のおかげか、パウダー・スノーで非常に滑りやすく、ビデオ撮影しながら滑った。しかし、緩斜面の後、イタリア側からのコースと合流する辺りは、逆にどうしようもない悪雪でターンするごとに転倒するような状態で、オートルートの雪質はいったいどちらに近いのかと期待と不安が交錯した・・・。
 広大な斜面にも慣れたころ、左手の崖淵に建っているルカン小屋で休憩するため、雪原(ジュアン氷河)を横切ることになったが、一番後ろを滑っていた山室は、皆に追いつこうと何気なくトレースを外してショート・カットしたところ、片足が沈みそうになった。前方を見ると、先行していたフランス人がこちらに向かって何か叫んでいる、「クレバス」が隠れていたのだ。直角に方向転換して、直ぐにトレースに戻るべきだったが、その少し脇を数メートル今度は下半身が沈んでしまった。幸いにも肩幅より狭かったために、 森田にロープで引っ張ってもらい体の向きを変えて自力で脱出できたが、不注意を反省するとともに、改めてクレバスの怖さを実感した。
 ルカン小屋はちょうど中間点にあり、展望も抜群なので、多くの人で賑わっていた。我々も小屋手作りのブルーベリーパイ、フルーツパイなどをつまみながらビールを飲んで大休止した。小屋から下は、一滑りでメール・ド・グラスに合流すると、傾斜が緩くなり、ほとんど直滑降状態であった。トレース上でもあり、かなりスピードも出ているはずであるが、広大な風景の中ではスピード感がない(まわりの西洋人は、さらに速いスピードで脇からどんどん追い抜いていくし・・・)。振り返ると、氷河奥のグランド・ジョラスが素晴らしく、またビデオ撮影しながら滑った。やがて、トレースが右に左にと小刻みになって、多少のアップダウンが出てきたらゴールは近い。
 氷河底からロープウェイでモンタヴェール駅まで登り、正面にドリュー峰を見ながらビールで乾杯した。
                                         (山 室)
〔コースタイム〕
シャモニー 8:35 = プラン・ド・レギーユ 8:45 = エギュ・ド・ミディ 8:55 → ルカン小屋 11:30 → モンタンヴェール 13:10


ブライトホルン登頂  5月5日(金) 快晴

 マッターホルンの頂には雲ひとつない。今日のブライトホルンの登頂はもはや疑いのないものと確信していた。
 トロッケナー・シュテークとクラインマッターホルンの間のロープウェイが整備中で運休のため、かなり下の方からTバーリフトを使う。これが日本のTバーリフトの比ではない。100mくらいは平気で登らせたり、カーブしたりと凄いTバーリフトである。結構足が張ってしまい疲れる。シールをはってスキー場を歩くのも何だかかっこう悪いが、こっちの人はそんなことは平気で、Tバーリフトを使わずに下(特にイタリア側)からシールを付けている人達もいた。2時間ぐらいがコースタイムだろう。おわんをかぶせたような感じの山である。やっぱり2時間ほどで山頂に着いた。天気が良いので360度の展望である。モンテローザだ、ヴァイスホルンだと大騒ぎだが、南の遥か彼方にぽっこりみえる三角錐の山に皆心を奪われ、アフリカの山かも?なんて冗談も飛び出す(結局手元にあった地形図の範疇を越えていてわからないままだが何だったのだろう。)。山頂の北側は風が強いが南側はポカポカで昼寝をしたいぐらいだ。山頂からの滑りはあっというまだった。イタリアとの国境に建つレストランでスパゲティの昼食。
 ゲレンデの中には、スイスとイタリアの国旗が書かれている案内板もあった。マッターホルン、マッターホルンと、とにかくマッターホルン一色である。フルクという中間駅まで滑り込み、後はロープウェイでツェルマットに戻る。
 今日も、コープで買い出しをする。相変わらずソーセージとチーズ、そして野菜スープとなる。トマト味でなかなかおいしいかった。明日はツェルマットの休日ならぬチェルビニアの休日となる。スキー場からイタリア入りするなんて凄い!夜遅くまでワインを楽しむ。
                                         (塩 見)
〔コースタイム〕
ツェルマット 8:00 = プラトー・ローザ 9:45 → ブライトホルン 11:55


エギュ・ド・ミディ地形図
ブライトホルン地形図

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