谷川連峰 赤谷川本谷

1995年8月19日〜20日  メンバー:森田(真)(単独)

 前夜のうちに川古温泉の林道ゲートに到着、仮眠。
 翌朝5:50出発。赤谷川林道を黙々と歩き7:30エビス大黒沢出合着。遡行準備を整え朝食をとって8:00遡行開始。歩き出すといきなりマワット下ノセンが現れる。左にはきっりとした巻き道があり簡単に巻く。続いてすぐにマワットノセンとなる。右壁を登れるそうだが釜が大きく、泳ぎでもしないと取り付けそうにない。ひょっとしたら右のバンド沿いに行けるのかも知れないが左を巻く。ここは草付きのトラバースが少々ひやりとする。
 二つの滝を巻いたあとは巨岩地帯となる。文字通り巨大な岩が谷を埋めていて幾つもの滝を形成している。登り易そうな所をさがしながら右岸沿いに高度を上げて行くが結構手間取る。こういう時は一人だとショルダーなどが使えないのでちょっとしたところで時間がかかるものである。
 ようやく巨岩地帯を抜けると遠くに大きな滝が見えてくる。あれが裏越ノセンだ。近づいてみると滝の裏側にバンドが横切り、なるほど確かに裏を通れそうである。ザックを釜の淵に置いて釜の左側を偵察してみるとあまり深そうではないのでそのまま釜に入ってみると膝上位の深さで簡単に渡れてしまった。ついでなので滝の裏側を通り釜をぐるりと一周して戻り、ザックを背負って再び左側を渡ってルンゼに取り付き高巻く。途中までは踏み跡を追ったが、途中から適当なところで沢に降りるとドウドウセンの入口だった。ドウドウセンはここからみるととても通過不能なところには見えないので知らなかったら間違いなくそのまま進んでしまうだろう。
 小休止の後10:30高巻き開始。日向窪の入口に赤テープがあったがそのまま日向窪を登り、登り易そうな所をさがして左岸の薮に入る。少しの薮漕ぎではっきりした尾根状に出たのでコンパスで方向を確認しながら尾根を登っていくと左に小さなガレ沢を見つけ、それを辿ると踏み跡のある痩せ尾根に出た。あとは踏み跡通りに行くとやがてスラブにぶつかり、適当なところをクライムダウンして沢に戻った。時刻は11:27、ちょうど1時間程かかった。
 降り立った谷は気持ちの良い河原で、この先はもう悪いところはない筈である。休憩がてらちょっとドウドウセンを見に行くが、いきなり最初の滝で先に進めなくなりそれより下は見る事が出来ない。しかし通行不能という事を確認するにはそれだけで充分、なかなかの迫力である。正直なところ、ここまではほとんど高巻きしかしていなかったので少々うんざりしていたのだが、この景観を見て来た甲斐があったかな?とうれしくなってきた。
 あとは適当な所をさがしてツェルトを張るだけであるが、何分まだお昼にもなっていないので出来るだけ先に行こうとのんびり歩き出すがここから先は傾斜がなくなりしばらくは広い河原になっている。小ゴルジュと出口の8m滝を越えるとあかるい河原の中にゴルジュ、ナメと適度に変化があって気分がいい。流れる水はものすごくきれいであまりにいい気分なのでちょっとした瀞でザックを置いて泳いでしまった。このような状態がどこまでもどこまでも続く。こんなに気持ちのいい河原歩きは生まれて始めてである。しだいに周囲は笹原や草原になり、おそらく最後の幕営適地と思われる1520m二俣にツェルトを張る。時刻はまだ13:20。ビールを飲みながらのんびりと過ごす。国境稜線に人が歩いているのが時折見える。
 翌朝6:40出発。雪渓を2つくぐって本流と思われる所を忠実につめるとやがて腰くらいの笹原となり、6分の笹漕ぎでオジカ沢ノ頭直下の俎嵒山稜にでる。7:30オジカ沢ノ頭到着。ここで土合に下山するか川古温泉へ戻るか相当迷うが、意を決して川古温泉への道をとる。晴天の稜線歩きはなかなか楽しい。左下には昨日遡ってきた赤谷川本谷が見える。9:25万太郎山到着。スキットルに残っていたウィスキーで水割りを作って飲む。実にうまい。あとは毛渡乗越から滑って転びながらどんどん高度を下げ、最後にうんざりするような長い林道を山行の余韻をかみしめながら(?)歩き、13:30川古温泉に到着。靴ずれが両足に2ヶ所づつ出来ていた。猿ヶ京温泉センターに寄ってところてんと缶ビールでささやかな打ち上げをしてから帰途につく。

 今回の遡行で、赤谷川本谷に以前から持っていた困難なイメージは一掃されてしまいました。この谷の特色はなんと言ってもドウドウセン上からの美しく心和む源頭にあるのではないかとつくずく思いました。それも悪場を過ぎた後に一気に緊張感から解放されるという展開が絶妙です。巨岩地帯を攀じ、滝を終始巻いたあとにこの源頭の美しさを楽しむ余裕を持った人にとってはこの谷はとても光る存在になるのではないでしょうか。


コースタイム
19日:川古温泉(5:50)―エビス大黒沢出合(7:30)―ドウドウセン上(11:27)―1520m二俣(13:20)
20日:1520m二俣(6:40)―オジカ沢ノ頭(7:35)―万太郎山(9:25)―川古温泉(13:30)



遡行図
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